出会いは、東日本大震災後、仮設住宅の集会所を拝借して開催された無料のニットカフェでした。
Kate & Co. のデザイナーである私、錦小路ナンシーは、2013年からボランティアチームに参加し、お茶やお菓子を楽しみながら編み物をするイベントのお手伝いに、宮城県石巻市や同名取市などに通っていました。参加してくださるみなさんの楽しそうな様子に触れるたびに、こんな時間を長く続けるためにはどうしたらいいだろうと思うようになりました。また、東北の方々は、いわば”冬のプロ”、「特別に習ったりはしていないからあまり上手じゃないのよ」とおっしゃりながら、「もちろん子どもが小さな頃はセーターを編んで、1年でサイズが小さくなっちゃうから次の冬には少しほどいて編み足して」、と、高い技術が必要なことを、さも簡単そうにさらりと話してくださることが多くありました。ニットカフェに着てきてくださったセーターを撫でながら、「津波で流された家の中から見つけて、引き出しの中で泥だらけになっていたから、何度も洗って汚れを落として、そのせいで色が褪せちゃったの」とおっしゃったその方の作品は、段染め糸を複雑な編み方で仕立てた、目を見張るほど素晴らしいものでした。
東京で自分の周りを見渡しても、編み物ができる人がそう多くはないのを感じていました。私は祖母も母も編み物が上手で、ふたりの手編みのセーターを着ていると驚かれ、羨ましがられることばかりだったからです。東北では普通の技術が、東京など他の土地ではより高い価値のある作品を生み出すことができる、と確信していました。無料ニットカフェで出会った方々にお声掛けし、同じくニットカフェに企業からのボランティアとして参加していた秋山エミとも意気投合して、手編みのブランドを立ち上げることにしました。宮城県以外で被災した方にも、ご縁があればお声掛けして、参加しやすいタイミングで制作チームに加わっていただく形にしています。
編むこと自体が素敵だけれど、集まって編む制作会の喜びは格別で、材料の受け渡しや納品で会う約束ができることも、私たちにとってかけがえのないことです。きっかけは震災だったけれど、このご縁はずっと大切にしたいと思っています。ブランドを立ち上げて10年以上経ちましたが、制作メンバーは、いまも商品を編むことには緊張感を持って取り組んでいます。それと同時に、「新しい商品を編むたびに、『これはどういう方が使ってくださるのかなあ』と想像すると、とってもわくわくして嬉しくなるの」とも話してくれます。
被災地支援という枠の中に現在の Kate & Co. をとらえるべきだと思ってはいませんが、現実的には、一度、自分のまわりの家もコミュニティーも仕事も、すべてが流されて、多くの場が失われて、そのとき失った多くのものは取り戻すのが難しいのだ、ということはひしひしと感じます。「震災前は畑でたくさん野菜を作ってたんだけどね」「震災前はこんな仕事してたのよ」と、今も会話によく登場します。その喪失を埋める一助になっていたらいいなと願うばかりです。
なので、みなさまに喜んでいただける素敵なものを、これからも作り続けたいと思っています。
Kate & Co. は、関わるすべての人の居場所のひとつとして存在し続けることを目指し、そして、ハンドメイドブランドとして、手を動かした人に対するフェアトレードを重視します。少人数で小規模の、小さな小さなチームですが、これからも信じる道を歩みます。
読んでくださってありがとうございました。ぜひ東北に遊びにいらしてくださいね。
錦小路ナンシー
*Kate & Co. の商品カードや、ウェブサイトのヘッダーなどに、”The Amazing Handmade Products mostly from TOHOKU, Japan” と記していますが、小さな字で”mostly”としている理由は、品物によっては一部の部品/一部の商品を、東京などに住む制作者が編むことがあるからです。ブランドを円滑に運営するため、多くの方のお力を借りています。また、ナンシーが東京に住んで制作に加わっていることもありますし、今後制作チームの被災したメンバーが他の場所に引っ越すことがあっても、制作依頼は続けます。いずれにしてもみなさまにご愛用いただける商品を、全員で精一杯つくっています。そしてそのほとんどのメンバーが現在、東北在住です。今後とも東北とともに輝けるブランドになるよう精一杯努力しますので、引き続きKate & Co. をよろしくお願いいたします!
